無邪気な好奇心は人を傷つけると思った出来事があった。
それ以前に最近は友達から学ぶことが多くて自分の研究の先行研究ができてきて、「知識人としておごっていた」。
それでもそれを学んだことに意義はあるし、より深めていこうと思っている。
トピックはアリゾナ・ツーソンの低所得者。
私の研究はSNAP (Supplemental Nutrition Assistance Program, 以前フードスタンプと呼ばれていた低所得者向け食料バウチャー補助プログラム。アメリカの農業省が施行している全米最大のセイフティーネット。昨年度は4,400万人が受給していた。)がその受給者にもたらす野菜・果物消費の効果だ。
SNAPの目的は低所得家庭の収入の維持とよりより食事へのアクセスを提供することだ。受給者の所得と家族構成員人数によってだいたい月$100〜$400ほど食料のための補助がでる。
現在までにSNAP、フードスタンプのもたらす効果に関する研究はたくさんなされている。そしてすでに「SNAPによって食費への支出が増える」「SNAPによって食料保障状態(家に食べ物があるかないか)が改善」されることはここ数十年ほど有意な効果がでている。残念ながら、「SNAP受給女性は、所得等が同じそうでない女性にくらべて、肥満率が高い」、「(同じ比較で)BMIが1ポイント高い」「SNAP受給者は、所得等が同じそうでない人に比べて自己報告の健康指数が低い」など、健康に対してはネガティブな効果が報告されている。
すなわち、「増えた食費への支出」が「健康」に変換されていないということだ。
ここでキモになるのが、「じゃあ何食べてんの?」という質問で、だからそれが私の研究課題だ。
残念ながら、「SNAPによる食べ物、栄養への効果」の研究はどれも結果がバラバラであまり強く支持されるコレといった結果が蓄積されていない。結構サポートされているのは「 Whole fruits (まるまる一個のフルーツ、加工とかされてなくて。)の消費はふえる!」のと「砂糖、脂肪の摂取と正の相関関係」と「肉の消費もふえる」だ。フルーツ増えるのはいいけど、あと砂糖と脂肪はダメ、肉は質と以前のタンパク質摂取量による。他にも穀物、牛乳、ビタミン、食物繊維、カロリー、鉄分、といろんなことに対して研究していて結構バラバラな結果とか、「なんも関係ないです」っていう結果とかがでている。
なんで強い主張(ポジティブでもネガティブでも)がないのかっていうと、
1ー食べ物の測り方がわからない!人が摂取した鉄分量とかどうしてわかろうか!って感じで、そもそも研究対象が自己報告の食べた量な時点で少し「ほんまかい」感がでる
2− 使われているデータが一様ではない。全米対象が多いけど、数州のみ、とか、田舎のみ、老人のみ、とかでバイアスがかかっている。NYCとツーソンの食費は違いますからね。
3− 統計モデルの違い。
知りたいことを知るのはかくも難しきかな、ですね。
私の研究分野で語れるのはここまで。
話はかわるが、私のロースクールにいる最高にヒップで強くて美しい友達はPublic Defenderという、貧しくて弁護士が雇えない人のための弁護士になろうとしている。弁護士の中では最も薄給の部類だ(そりゃお金とる相手がいないからね)。法が守ってくれないような人を守る仕事で、同職で昨夏インターンした彼女は「毎日とても悲しかった」と言っていた。
2年目も半ばになって、彼女も専門の勉強を深めていて、最近はImmigration関連の実際の法手続きのアシスタント(それで単位がでる)をしたり、よりリアリスティックな現状に向き合っているし、トランプのExecutive orderのでた中、力を感じているそうだ。
横道だが、最近の私のプログラム(計量経済)での親友は、コロンビアで弁護士をしていた友達で、彼女は元々ポリティカルサイエンスとロースクールを出ているのに、計量にきたツワモノだ。
こないだこの2人と満月を見にハイキングをした。
もちろん話は政治と法の話になった。(こんなに実りのある聞き役があるものか、と思う)
先日こんな事件が州都フェニックスであった。
https://www.pri.org/stories/2017-02-10/attorney-says-woman-deported-phoenix-might-have-had-her-conviction-overturned
トランプの人種差別なExecutive Order, 「前科のある移民から優先的に強制送還させる」というものが適用され、以前ID詐称したがその後正式な法的手続きをへて市民権を得たメキシコ人女性が非合法的に移民局に拘置、強制送還されたのだ。彼女には2人のアメリカ国民のこどもがいる。
彼女を強制送還したオフィサーは憲法違反の差別的な法的手段をとることで有名な人で、現在まさに水を得た魚である。
しかもオバマのときに独立を約束された移民局と警察が、トランプ政権のもとでは協働するように促がされており、この例もあったせいで、まったく普通にくらしている移民に今恐怖が蔓延している。州知事も反対している。(そもそもアリゾナから移民がなくなったら社会も経済もまわらなくなる!!!)
なんとも中指を突き出したくなる現状だ。
それがこの先進国アメリカの進んでいるディストピアである。ミッシェルオバマの最後のスピーチを聞いて彼女は素晴らしいと感銘を受けてた日はまだ平和だったのだなと今思う。
話はもどるけど、彼女いわくツーソンのはずれにある拘置所はとても寒くて人が死ぬこともあるらしい。コロンビアの友達はこの拘置所に(嫌な)縁があったのだがそれは秘密。
実は私の周りに拘置所と刑務所にとても詳しい人がいる。
剣道の道場主だ。
彼こそはツーソンでパブリックディフェンダーを30年続けている人で、たまにジョークで刑務所の話をする。
そしてなんと私の友達が彼のことを知っていたのだ!
どうやらその現場で弁護士のアシストをするセッション(クリニックと呼ぶ、ローオフィスがクリニックと呼ばれている)で一緒になったことがあるらしい。それを発見した私は早速昨日の稽古のあとに友達の名前をだした。
She knows you!
昨夜は奇遇にも私と彼しかおらず(初めてだ!)彼は参加率の低さに超怒っていたけれども、ゆっくりと技を教えてもらえたりして私たちは良い稽古ができた。
その帰りに、友達と話した話とか、私は私で「フードスタンプはやっぱ健康ちゃうわ」って話したりとか、普段剣道メンバーの前で話さない話をした。「刑務所の飯は食いモンちゃうわ」とか。
私の友達は彼が剣道をしてると知ったとき「なんか、よかった。毎日悲しい話と向き合う仕事だから。彼にそういうほかに打ち込めるものがあるって知れてよかった」って言っていた。彼女は学生で、彼はプロフェッショナルで、仕事への思いの熱い人だけど、感情はきっともう切り離せるのだろうと思って、その夜に「彼女は、感情の切り替えのできるのすごいなって言ってたよ」って彼に伝えたのだ。彼は「いまだに悲しいけど、もう泣くことは減ったかな」と言っていた。
私はこの発言がとても軽率だったと今反省している。
今日フェイスブックを見ていたら彼の投稿があった。
「昨日、受刑待ちだったクライアントの女性が、子供を産むときに死んだという報告をきいた。はじめ彼女が逮捕されたときは本当にダメで、ヤク漬けで、ホームレスで彼氏からの暴力で目の周りが真っ黒だった。でも仮釈放時に本当によくやって、薬物中毒からもぬけだしたんだ。逮捕されたときに、妊娠したってわかって、それが彼女がちゃんとやれた理由のひとつだった。本当に人生を変えていたのに。とても悲しい」
未来のみえてきたクライアントの突然の死のあとの稽古に、私はあんな話をしたのかと!
少し彼らの仕事を見聞きしたからって、もっと知りたいと思って、友達は「とても悲しい仕事」とことあるごとに言ってたのに。ずけずけ聞いてしまった自分をとても恥じた。悔いた。
あと、本当に悲しい仕事だなって思った。
ignorance, unawareness は暴力だ。
私は本当に本当に温室育ちで世の中の美しいところだけを見て美しいところで育って美しいもの目指して生きていて。
自分の層と分断されている層を知りたいのは本音だ。本当に知りたい。私には教育という武器があるから、手強い相手と戦う武器があるから、それを存分に使いたいのだ。私自身がいっぱい教育に、技術に、新しい発明に助けられたのだ。実は簡単に助かることがいっぱいあって、知らないだけの人にどうか伝えたいんだ。救われるよって。
けど、やっぱり私もこちら側の人なのだ。トランプのサポーターが鼻をつまんで嫌うような。そのものなんだ。
私は弱くて、彼らみたいにそんなシビアな世界の第一線で弱い人に寄り添って生きることはできない。心が崩れると思う。けど、栄養とかもっと生活のボトムラインでなにか支えることができたら、と思う。
甘いかもしれないけど一生懸命やりたい。
今朝出た気候変動に関するリサーチチームの研究報告会で、バングラデシュの気候変動とvulnerabilityに関するプレゼンを見ていた。プレゼンターはバングラ人PhD。バングラデシュは三角州のような出来かたをした土地で(確か。)、川が多いのと地盤が緩く、気候変動によって洪水が増えて、貧しく社会的に不安定な人たちからどんどんより深い貧困におとされていく。今、経済状況が二極化していて、貧しい人と豊かな人ばかりで中間層がいないらしい。
社会的に不安定な人とは、という質問があり、彼はこう答えていた。
1−自分の土地をもたない人。たとえ洪水があって自分の収穫が0でも契約上お金をはらわなきゃいけないから。
2−政府や役人の使う言葉を知らない人。バングラデシュは他言語国家で、中央の言葉を知らない人からしたら、どんな情報もないに等しい。(情報の断絶)
そして彼らは「ニーズを伝えられない」(伝え方をしらない、伝えるということを知らない)らしい。
彼が農家とした会話で印象的なものがあり、引用していた。
農家「わたしのすきな食べ物しってる?」
学生「しらんがな」
農家「まあこたえてみてよ」
学生「こめ?」
農家「なんでそう思った?」
学生「僕は米が好きだし、〜だからかなって。」
農家「あなたも、政府の役人も、みんなそうやって勝手に彼らの答えを押し付けてくるんだよね。誰も自分たちを見ない」
これ、まさに中央のおごりだと思う。そもそも言語を用意していないのもそうだけれど、相手はこうだろうっていうの、とても押し付け。
最後の例。
中高の友達で、ものかきの仕事に携わりたい子がいて、実は1年くらい前に見事に転職して、webベースの出版社の編集になった子がいる。彼女が担当している漫画が紙面にのったということで、シェアされたのだけど、私からしたらいまいちおもしろくない。私の友達も好んで読むわけじゃないなあって思って。その他に彼女が「他社だけどあすみすきそうなもの」と言って教えてくれたのはおもしろかった。
でも、彼女の会社が続いているのは読者がいるからで。疑問に思ってどんな人が読んでいるか聞いたら、30〜50代の男性。50歳が読む漫画には見えず驚いた。そして「感想ハガキ送ってくれる人もいるけど、その中で35なのに日本語不自由な人とかいて、実際会わないような人たちだと思うよ」とのこと。面接でも「あなたは高学歴だけど、うちのお客さんは違う層だけど大丈夫?」って聞かれたらしい。
社会は本当に分断されている。
私から見えてない層が、私と全く異なる好みをもって、同じ社会で、違うものを消費して違う嗜好をもって(思考も違くて)生活している。けれど国はひとつだから、みんなが幸せになりたいなら、お互いのことを知って、歩み寄らなきゃいけない。そうじゃないと、どちらかひとつ、多くの場合はすでに権利を多くもつほう、のための社会になってしまう可能性がある。または、どちらも幸せにならない、トランプ政権のようなディストピアがうまれてしまうのだ。
この溝は高学歴の正攻法のお勉強じゃうまらなくて。
とてもセンシティブな問題だ。あちら側に閉ざされるかもしれない。
それでも、どうかあなたのことを教えてください、ってある知恵しぼってどうにか教えてもらって、あと自分たちのことも知ってもらわないといけないと思う。
それは、自分の、自分の属するコミュニティの、そして属さないコミュニティの幸せを守るために必要なステップだと私は思うのだ。
いろんなことを思う日々だったので、備忘録として。
それ以前に最近は友達から学ぶことが多くて自分の研究の先行研究ができてきて、「知識人としておごっていた」。
それでもそれを学んだことに意義はあるし、より深めていこうと思っている。
トピックはアリゾナ・ツーソンの低所得者。
私の研究はSNAP (Supplemental Nutrition Assistance Program, 以前フードスタンプと呼ばれていた低所得者向け食料バウチャー補助プログラム。アメリカの農業省が施行している全米最大のセイフティーネット。昨年度は4,400万人が受給していた。)がその受給者にもたらす野菜・果物消費の効果だ。
SNAPの目的は低所得家庭の収入の維持とよりより食事へのアクセスを提供することだ。受給者の所得と家族構成員人数によってだいたい月$100〜$400ほど食料のための補助がでる。
現在までにSNAP、フードスタンプのもたらす効果に関する研究はたくさんなされている。そしてすでに「SNAPによって食費への支出が増える」「SNAPによって食料保障状態(家に食べ物があるかないか)が改善」されることはここ数十年ほど有意な効果がでている。残念ながら、「SNAP受給女性は、所得等が同じそうでない女性にくらべて、肥満率が高い」、「(同じ比較で)BMIが1ポイント高い」「SNAP受給者は、所得等が同じそうでない人に比べて自己報告の健康指数が低い」など、健康に対してはネガティブな効果が報告されている。
すなわち、「増えた食費への支出」が「健康」に変換されていないということだ。
ここでキモになるのが、「じゃあ何食べてんの?」という質問で、だからそれが私の研究課題だ。
残念ながら、「SNAPによる食べ物、栄養への効果」の研究はどれも結果がバラバラであまり強く支持されるコレといった結果が蓄積されていない。結構サポートされているのは「 Whole fruits (まるまる一個のフルーツ、加工とかされてなくて。)の消費はふえる!」のと「砂糖、脂肪の摂取と正の相関関係」と「肉の消費もふえる」だ。フルーツ増えるのはいいけど、あと砂糖と脂肪はダメ、肉は質と以前のタンパク質摂取量による。他にも穀物、牛乳、ビタミン、食物繊維、カロリー、鉄分、といろんなことに対して研究していて結構バラバラな結果とか、「なんも関係ないです」っていう結果とかがでている。
なんで強い主張(ポジティブでもネガティブでも)がないのかっていうと、
1ー食べ物の測り方がわからない!人が摂取した鉄分量とかどうしてわかろうか!って感じで、そもそも研究対象が自己報告の食べた量な時点で少し「ほんまかい」感がでる
2− 使われているデータが一様ではない。全米対象が多いけど、数州のみ、とか、田舎のみ、老人のみ、とかでバイアスがかかっている。NYCとツーソンの食費は違いますからね。
3− 統計モデルの違い。
知りたいことを知るのはかくも難しきかな、ですね。
私の研究分野で語れるのはここまで。
話はかわるが、私のロースクールにいる最高にヒップで強くて美しい友達はPublic Defenderという、貧しくて弁護士が雇えない人のための弁護士になろうとしている。弁護士の中では最も薄給の部類だ(そりゃお金とる相手がいないからね)。法が守ってくれないような人を守る仕事で、同職で昨夏インターンした彼女は「毎日とても悲しかった」と言っていた。
2年目も半ばになって、彼女も専門の勉強を深めていて、最近はImmigration関連の実際の法手続きのアシスタント(それで単位がでる)をしたり、よりリアリスティックな現状に向き合っているし、トランプのExecutive orderのでた中、力を感じているそうだ。
横道だが、最近の私のプログラム(計量経済)での親友は、コロンビアで弁護士をしていた友達で、彼女は元々ポリティカルサイエンスとロースクールを出ているのに、計量にきたツワモノだ。
こないだこの2人と満月を見にハイキングをした。
もちろん話は政治と法の話になった。(こんなに実りのある聞き役があるものか、と思う)
先日こんな事件が州都フェニックスであった。
https://www.pri.org/stories/2017-02-10/attorney-says-woman-deported-phoenix-might-have-had-her-conviction-overturned
トランプの人種差別なExecutive Order, 「前科のある移民から優先的に強制送還させる」というものが適用され、以前ID詐称したがその後正式な法的手続きをへて市民権を得たメキシコ人女性が非合法的に移民局に拘置、強制送還されたのだ。彼女には2人のアメリカ国民のこどもがいる。
彼女を強制送還したオフィサーは憲法違反の差別的な法的手段をとることで有名な人で、現在まさに水を得た魚である。
しかもオバマのときに独立を約束された移民局と警察が、トランプ政権のもとでは協働するように促がされており、この例もあったせいで、まったく普通にくらしている移民に今恐怖が蔓延している。州知事も反対している。(そもそもアリゾナから移民がなくなったら社会も経済もまわらなくなる!!!)
なんとも中指を突き出したくなる現状だ。
それがこの先進国アメリカの進んでいるディストピアである。ミッシェルオバマの最後のスピーチを聞いて彼女は素晴らしいと感銘を受けてた日はまだ平和だったのだなと今思う。
話はもどるけど、彼女いわくツーソンのはずれにある拘置所はとても寒くて人が死ぬこともあるらしい。コロンビアの友達はこの拘置所に(嫌な)縁があったのだがそれは秘密。
実は私の周りに拘置所と刑務所にとても詳しい人がいる。
剣道の道場主だ。
彼こそはツーソンでパブリックディフェンダーを30年続けている人で、たまにジョークで刑務所の話をする。
そしてなんと私の友達が彼のことを知っていたのだ!
どうやらその現場で弁護士のアシストをするセッション(クリニックと呼ぶ、ローオフィスがクリニックと呼ばれている)で一緒になったことがあるらしい。それを発見した私は早速昨日の稽古のあとに友達の名前をだした。
She knows you!
昨夜は奇遇にも私と彼しかおらず(初めてだ!)彼は参加率の低さに超怒っていたけれども、ゆっくりと技を教えてもらえたりして私たちは良い稽古ができた。
その帰りに、友達と話した話とか、私は私で「フードスタンプはやっぱ健康ちゃうわ」って話したりとか、普段剣道メンバーの前で話さない話をした。「刑務所の飯は食いモンちゃうわ」とか。
私の友達は彼が剣道をしてると知ったとき「なんか、よかった。毎日悲しい話と向き合う仕事だから。彼にそういうほかに打ち込めるものがあるって知れてよかった」って言っていた。彼女は学生で、彼はプロフェッショナルで、仕事への思いの熱い人だけど、感情はきっともう切り離せるのだろうと思って、その夜に「彼女は、感情の切り替えのできるのすごいなって言ってたよ」って彼に伝えたのだ。彼は「いまだに悲しいけど、もう泣くことは減ったかな」と言っていた。
私はこの発言がとても軽率だったと今反省している。
今日フェイスブックを見ていたら彼の投稿があった。
「昨日、受刑待ちだったクライアントの女性が、子供を産むときに死んだという報告をきいた。はじめ彼女が逮捕されたときは本当にダメで、ヤク漬けで、ホームレスで彼氏からの暴力で目の周りが真っ黒だった。でも仮釈放時に本当によくやって、薬物中毒からもぬけだしたんだ。逮捕されたときに、妊娠したってわかって、それが彼女がちゃんとやれた理由のひとつだった。本当に人生を変えていたのに。とても悲しい」
未来のみえてきたクライアントの突然の死のあとの稽古に、私はあんな話をしたのかと!
少し彼らの仕事を見聞きしたからって、もっと知りたいと思って、友達は「とても悲しい仕事」とことあるごとに言ってたのに。ずけずけ聞いてしまった自分をとても恥じた。悔いた。
あと、本当に悲しい仕事だなって思った。
ignorance, unawareness は暴力だ。
私は本当に本当に温室育ちで世の中の美しいところだけを見て美しいところで育って美しいもの目指して生きていて。
自分の層と分断されている層を知りたいのは本音だ。本当に知りたい。私には教育という武器があるから、手強い相手と戦う武器があるから、それを存分に使いたいのだ。私自身がいっぱい教育に、技術に、新しい発明に助けられたのだ。実は簡単に助かることがいっぱいあって、知らないだけの人にどうか伝えたいんだ。救われるよって。
けど、やっぱり私もこちら側の人なのだ。トランプのサポーターが鼻をつまんで嫌うような。そのものなんだ。
私は弱くて、彼らみたいにそんなシビアな世界の第一線で弱い人に寄り添って生きることはできない。心が崩れると思う。けど、栄養とかもっと生活のボトムラインでなにか支えることができたら、と思う。
甘いかもしれないけど一生懸命やりたい。
今朝出た気候変動に関するリサーチチームの研究報告会で、バングラデシュの気候変動とvulnerabilityに関するプレゼンを見ていた。プレゼンターはバングラ人PhD。バングラデシュは三角州のような出来かたをした土地で(確か。)、川が多いのと地盤が緩く、気候変動によって洪水が増えて、貧しく社会的に不安定な人たちからどんどんより深い貧困におとされていく。今、経済状況が二極化していて、貧しい人と豊かな人ばかりで中間層がいないらしい。
社会的に不安定な人とは、という質問があり、彼はこう答えていた。
1−自分の土地をもたない人。たとえ洪水があって自分の収穫が0でも契約上お金をはらわなきゃいけないから。
2−政府や役人の使う言葉を知らない人。バングラデシュは他言語国家で、中央の言葉を知らない人からしたら、どんな情報もないに等しい。(情報の断絶)
そして彼らは「ニーズを伝えられない」(伝え方をしらない、伝えるということを知らない)らしい。
彼が農家とした会話で印象的なものがあり、引用していた。
農家「わたしのすきな食べ物しってる?」
学生「しらんがな」
農家「まあこたえてみてよ」
学生「こめ?」
農家「なんでそう思った?」
学生「僕は米が好きだし、〜だからかなって。」
農家「あなたも、政府の役人も、みんなそうやって勝手に彼らの答えを押し付けてくるんだよね。誰も自分たちを見ない」
これ、まさに中央のおごりだと思う。そもそも言語を用意していないのもそうだけれど、相手はこうだろうっていうの、とても押し付け。
最後の例。
中高の友達で、ものかきの仕事に携わりたい子がいて、実は1年くらい前に見事に転職して、webベースの出版社の編集になった子がいる。彼女が担当している漫画が紙面にのったということで、シェアされたのだけど、私からしたらいまいちおもしろくない。私の友達も好んで読むわけじゃないなあって思って。その他に彼女が「他社だけどあすみすきそうなもの」と言って教えてくれたのはおもしろかった。
でも、彼女の会社が続いているのは読者がいるからで。疑問に思ってどんな人が読んでいるか聞いたら、30〜50代の男性。50歳が読む漫画には見えず驚いた。そして「感想ハガキ送ってくれる人もいるけど、その中で35なのに日本語不自由な人とかいて、実際会わないような人たちだと思うよ」とのこと。面接でも「あなたは高学歴だけど、うちのお客さんは違う層だけど大丈夫?」って聞かれたらしい。
社会は本当に分断されている。
私から見えてない層が、私と全く異なる好みをもって、同じ社会で、違うものを消費して違う嗜好をもって(思考も違くて)生活している。けれど国はひとつだから、みんなが幸せになりたいなら、お互いのことを知って、歩み寄らなきゃいけない。そうじゃないと、どちらかひとつ、多くの場合はすでに権利を多くもつほう、のための社会になってしまう可能性がある。または、どちらも幸せにならない、トランプ政権のようなディストピアがうまれてしまうのだ。
この溝は高学歴の正攻法のお勉強じゃうまらなくて。
とてもセンシティブな問題だ。あちら側に閉ざされるかもしれない。
それでも、どうかあなたのことを教えてください、ってある知恵しぼってどうにか教えてもらって、あと自分たちのことも知ってもらわないといけないと思う。
それは、自分の、自分の属するコミュニティの、そして属さないコミュニティの幸せを守るために必要なステップだと私は思うのだ。
いろんなことを思う日々だったので、備忘録として。